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オペラ座の怪人



────── あなたの声で私の花が開きはじめる。

パリ、1919年。ドラマは過去へとタイムスリップを始める。
かつては豪華絢爛だったパリ・オペラ座。その栄華を偲ぶ品々が、廃墟となった劇場でオークションにかけられていた。そこには、老紳士ラウル・シャニュイ子爵(パトリック・ウィルソン)と年老いたバレエ教師、マダム・ジリー(ミランダ・リチャードソン)の姿があった。やがて、謎の惨劇に関わったとされるシャンデリアが紹介され、ベールが取り払われると、ふたりは悲劇の幕開けとなった1870年代当時へと一気に引き戻される。

パリ、1870年代。オペラ座では奇怪な事件が続いていた。
オペラ「ハンニバル」のリハーサル中、プリマドンナのカルロッタ(ミニー・ドライヴァー)の頭上に背景幕が落下した。腹を立てたカルロッタは役を降板。代役を務めたのはバレエダンサーのクリスティーヌ(エミー・ロッサム)だった。喝采を浴びた彼女は幼馴染みのラウルと再会。だが、その喜びも束の間、仮面をかぶった謎の怪人・ファントム(ジェラルド・バトラー)にオペラ座の地下深くへと連れ去られてしまう。

地下の迷宮。そこには怪人の憎しみと哀しみがあった。
クリスティーヌは、ファントムを亡き父親が授けてくれた‘音楽の天使’だと信じてきたが、地下の隠れ家で仮面をはぎ、その正体を知ってしまう。同時に彼の孤独な心と自分に対する憧れにも気づくのだった。その頃、オペラ座の支配人たちは、オペラ「イル・ムート」の主役にクリスティーヌを据えよというファントムからの脅迫状を受け取っていた。その要求を無視してカルロッタを主役に立てた舞台は大混乱。ついに殺人事件が起きてしまう。

オペラ座の屋上。ふたりは永遠の愛を誓う。
恐怖にかられたクリスティーヌは、ラウルにファントムの正体を打ち明ける。クリスティーヌを優しく抱くラウル。愛を確かめ合うふたりを、ファントムは怒りと哀しみの目で見つめていた。大晦日、仮面舞踏会で婚約の喜びに浸るクリスティーヌラウルの前に、ファントムは自作の新作オペラ「勝利のドン・ファン」を持って現れる。ファントムを追って迷宮に迷い込むラウル。それを助けたマダム・ジリーはファントムの暗い過去を語るのだった。

「勝利のドン・ファン」初日。惨劇はその日に起きた。
‘音楽の天使’への思慕にかられたクリスティーヌは、亡き父の墓地に出向く。心配して後を追ってきたラウルは潜んでいたファントムと決闘になるが、ファントムにとどめを刺そうとするラウルをとめたのはクリスティーヌだった。「勝利のドン・ファン」の初日、厳重な警戒態勢の中、ファントムは大胆にも主役になりかわり、クリスティーヌとデュエットする。舞台で仮面をはぎ取るクリスティーヌ。怒ったファントムはシャンデリアを客席に落としてクリスティーヌを再びさらう。消えたふたりを探すラウルは、やっとの思いで地下の隠れ家にたどり着く。そこには3人の運命が待っていた───。

(パンフレットより)

予告で何度も観ていたシーンなのに
♪ジャーーン!ジャジャジャジャジャーン!♪の音楽と共に体中の毛穴が全開!!(笑)
シャンデリアのベールが取り除かれ、ゆっくりと天井に上っていきながらオペラ座が精彩を取り戻していく映像美が素晴らしくて冒頭から一気に私も1870年へと引き込まれました。
舞台とは違った映画のなせる技ですよね。

ここからはもっと突っ込んだネタバレと感想です。ご注意ください。

ファントムのクリスティーヌへの屈折した愛情には同情をおぼえました。不幸な生い立ちがそうさせてしまったのでしょうね。
現代なら美容整形だって植毛だって思いのままだしもっと才能を発揮できたはずなのに・・・
マダム・ジリーが若いバレリーナ時代に、見世物小屋から逃亡したファントムを養護し、オペラ座の地下に匿ってから外部との接触を一切持たずにきた彼にとって、クリスティーヌは「生甲斐」そのものだったのでしょう。
そんなファントムの孤独で燃えるような情熱に、怯えながらも心を囚われてしまうクリスティーヌ。
オペラ「勝利のドン・ファン」で“ポイント・オブ・ノー・リターン”をデュエットしている時のクリスティーヌの心は確かにファントムにあると感じました。
ぴったりと寄り添うふたりのボディ・ランゲージが官能的で・・・
抗いきれない運命に身を委ねるような恍惚としたクリスティーヌの表情が印象的でした。
それを見ていたラウルが静かに涙を流すんです。最初は驚きの顔が、彼女はファントムを愛してるのだろうか・・・?という不安に変わり、やがてふたりの間には誰も入り込めないと感じたような半ば放心状態で・・・
私はこのラウルの涙がとても心に残りました。
あんな表情が出来るなんて素敵な俳優さんだわ。

ラスト、さらわれたクリスティーヌを助けようと迷宮までやってきたラウルはファントムに捕らえられてしまいます。
そこでラウルの命を助けたければ自分を愛せとクリスティーヌに迫るファントム。
ラウルは、「私を裏切らないでくれ」と言います。
私はこの言葉を「私を助けるために自分を偽らないで欲しい」と解釈したのですが、ラウルが命乞いをしたと受け取った人もいたらしく、公式HPのBBSで話題になっていました。
どうやら誤訳ではないかということでした。
クリスティーヌが、ファントムに対して「ずっと惹かれていた」と唐突に言った言葉や、“貴方は人格が歪んでいる”と言った時、「貴方の望みは歪んだ肉欲」と言ったのも変ということで。
「ずっと惹かれていた」は「貴方は孤独ではない」で、「私を裏切らないでくれ」は「私の事は考えなくていいから、(クリスティーヌが生き延びる為に)彼を愛すると言ってくれ」だったらしいです。
「貴方の望みは歪んだ肉欲」も「飢えた悪魔の餌食」が適当だったようです。
こんなこと(誤訳)ってあるのかしら?字幕はあの戸田さんなのよ。

そして母親の愛情も知らず、生涯誰からもキスをされた事のないファントム、優しく愛撫されたこともなく、人肌のぬくもりも知らないファントムがクリスティーヌのキスを受けた瞬間、彼は愕然とします。彼は初めて人の優しさを知り、愛というものを悟ったのでしょう。才能あふれ輝くクリスティーヌを自分が縛ることはできない。ラウルとの生活の方が彼女は幸せになれると・・・
そして吐き出すように言います。「行け!」・・・・
一度もキスをしたことがないということを想像し表現したジェラルド・バトラーも名演技でした。

突っ込みたくなったところは、冒頭のオークションのシーンに登場するマダム・ジリーが若すぎたってことかな。1870年代に10代後半の娘(メグ)を持つ母親だったマダム・ジリーとラウルの年齢差が・・・???
パンフレットを見るまで、あの女性は娘のメグだと思っていたくらいなんですよね。
だって、ラウルよりマダム・ジリーの方が若く見えるんだもん。
16、7の娘を持つ母親なら40歳前後だと思うのだけど、1870年代に40歳だとして、40年後は80歳近いはず。
あの女性はどう見ても60代にしか見えないのだけど・・・(^▽^;)

さて、クリスティーヌがその後どんな人生を送ったのか・・・
その疑問はエンディングに解けます。
オークションで落札したサルのオルゴールをラウルがクリスティーヌの墓前に手向けに行くんです。
その墓碑に刻まれた文字を見たとき、彼女が幸せな家庭を築き、愛情に溢れた素晴らしい人生を歩んだことがわかりました。
クリスティーヌの選択は正しかったんだと。

そして・・・
そこにはあの頃の情熱のように燃えるような鮮やかな真紅のバラ一輪が供えられていました。
ラウルは、ファントムもまたクリスティーヌを今も深く愛しているのだと、同じ女性を愛した相手に“同士”の様な感情を持ったのかもしれません。
モノクロの中に真紅のバラが一際光彩を放っていました。

前編を通して映像美(オペラ座や衣装など)と音楽が素晴らしく大スクリーンと大音響をたっぷり堪能しました。
これも劇場で観ることをお勧めしたいな。
by webwing | 2005-03-11 00:00 | 2005年劇場版


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