きみに読む物語



         365通の手紙。
        白鳥の棲む湖。
        ──あの雨の朝の匂い。

        思い出が少しずつ、
        きみからこぼれていく。
        だから、  
        きみが思い出すまで、
        僕は読む──。




数日経った今でも感動のラストシーンをはっきりと思い出すことが出来ます。
深い深い真実の愛を──
そしてその愛が起こした奇跡を──



いつものようにネタバレです。ご注意下さい。


 空も湖も目に沁みるようなオレンジ色に染まった美しい風景の中、ゆっくりとボートを漕ぎ出す初老の男から物語は始まります。
岸に近づくボートを窓辺で見つめる初老の女性。
彼女は情熱的に生きた過去の思い出のすべてを失っていました。
療養生活を送るそんな彼女(ジーナ・ローランズ)の元に、物語を読み聞かせるためデュークと名乗るその男(ジェームズ・ガーナー)は足繁くやってくるのです。 
彼が語るそれは、1940年の夏、アメリカ南部の小さな町のきらめくような夏の恋物語・・・。


 休暇を過ごしに都会からやって来た17歳の令嬢・アリー(レイチェル・マクアダムス)に、地元の製材所で働く青年ノア(ライアン・ゴズリング)は運命的な出逢いを感じ急接近します。
強引なノアにやがてアリーも惹かれ、情熱的な恋に落ちます。
障害が多いほど燃え上がる恋…まさにその典型。
身分違いの恋に、娘の将来を案じた両親はアリーを都会へ連れ戻し進学させてしまいます。
ノアは365日毎日手紙を書きますが、その手紙はアリーの母によって隠されてしまい、一通の返信も受け取ることなくノアは第2次世界大戦の戦場へ。

空白の7年の後にノアとの恋に訣別し、別な男性と恋に落ち婚約してしまうアリー。
身勝手な価値観を押し付ける両親に反抗心を持ち続けていたアリーにとって、皮肉なことに彼はノアにはない財産や地位をもった、両親も諸手をあげて祝福する好青年でした。
そして結婚を目前に控えたある日、偶然ノアの新聞記事を見つけ思い迷うアリー。
そして「やり残したことがあるから」と婚約者の承諾を得て、あのキラキラしていた日々を過ごしたシーブルックに向かいます。

読み聞かせるデュークの語り口が、ジーンとくるんです。
穏やかで優しくて温かくて、深い愛情に溢れていて・・・

この若い2人の恋物語が、実はこの老いた2人のストーリーだと言うことに、間もなく気付かされるのですが、結果が予想できるのに、2人の恋の行方が気になりぐいぐい引き込まれてしまいます。

そして私が一番感動したラストシーン・・・
きっと観た人はみんな私と同じ気持ちじゃないかな。
言葉で表現しようとすると嘘っぽくなりそうなんです。
観ていない人の感動を奪ってしまいそうで申し訳ないし、是非自分の目で観て感動を味わって欲しいと思います。


見所は他にも沢山あります。
若い2人の感情が極まって、結ばれたいと強く願うシーンがあるんですが、自分で一枚ずつ衣類を脱いでいき生まれたままの姿になるところは、相手を想う純真な気持ちが伝わってきてドキドキしました。

そして再会した二人が押し殺していた感情を、嵐に後押しされるようにぶつけ合い、求め合うシーンとか。

実はアリーの母も若い頃にあのシーブルックで、アリーと同じような恋愛を経験してきていて、本当は心の中では許し、そしてアリー自身にこれからの人生の選択を委ねるところとか。 

読み聞かせることで、失った愛する妻を取り戻す僅かな瞬間があるんですが、その時のデュークが80歳の老人なのにとても可愛く見えるんです。
『マイダーリン』と呼び、愛しさでいっぱいの表情をして。
初めて恋人の名を呼ぶ10代の青年のように初々しくて。
それに応えるアリーも娘のようでした。
でも次の瞬間、夫の『ダーリン』という呼びかけに、『あなた誰?なぜ知らない人がダーリンと言うの?』とパニックになるアリー。
ジーナ・ローランズの名演技でした。
ほんの僅かな時間でまたアリーを失ってしまった時の、デュークの落胆振りがまた泣かせるんです。
目にいっぱい涙を溜めて、打ちひしがれ体を震わせて・・・

記憶を取り戻しても数分後にはもう夫を他人だと思ってしまう妻と、それでもなおも彼女を愛し続ける夫。
二人の間には、どんな障害をも乗り越えられるゆるぎない確かな愛が存在しました。
デュークが読み聞かせていた物語は、実はアリーが書いたものだったんです。
彼女は自分が完全に発症してしまう前に、二人の愛の記録をノートブックに残し、それを夫に読み聞かせてもらうことを望んでいたんです。
それによって奇跡が起こるかもしれないと・・・

共に歩んできた大切な記憶までをも失ってしまうアルツハイマーという病に最愛の伴侶を奪われても、なおも変わらぬ愛情で残りの人生を寄り添って生きていくことだけを望み、最愛の人をとりもどそうとする努力を惜しまない献身的な夫婦愛に人間の尊厳を感じました。

『わたしは、ありふれた男だ。でも、わたしには全身全霊をかたむけて愛する女性がいる。いつでも、それだけで十分だった。』というデュークが語る冒頭の言葉が、ラストで確かに胸に届きました。


また大切なことを教わった気がしました。
『ネバーランド』に続いてライフログになりそう・・・
お勧めです!

きみに読む物語
ニコラス・スパークス 雨沢 泰 / アーティストハウスパブリッシャーズ
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by webwing | 2005-02-14 23:59 | 2005年劇場版


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