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代筆屋

代筆屋
辻 仁成 / 海竜社
出版社/著者からの内容紹介
どうしても伝えなきゃいけない想いがある。自分では表現できないほど強い想いがー。
舞台は、吉祥寺の井の頭公園のそばにあるカフェ「レオナルド」。小説家のはしくれの「私」は、口コミで広がった「代筆屋」として、恋に悩む青年から、88歳の老女まで、老若男女のさまざまな想いの代筆を依頼されます。恋あり、別れあり、喜びあり、悲しみあり、依頼人らの人生模様と切実な想いは、手紙を通してあなたの胸を優しく包みこみます。思わず大切な人に手紙を書きたくなる一冊です。

目次
拝啓(まえがきみたいなもの) 
第一章 『名前も分からぬ人へ向けた恋文の書き方』
第二章 『咲くよ桜』 
第三章 『過去に囚われず、未来に縛られず』 
第四章 『目を細めて、輝く水平線を』 
第五章 『この際、はっきりとさせるために』 
第六章 『でも死のうとは思わない』 
第七章 『ラブレターのすすめ』 
第八章 『八十八歳のわたしより』 
第九章 『心境』 
第十章 『雪のかまくら』 
追伸(あとがきにかえて)


タイトルに惹かれて手にした1冊でした。
辻さんご本人の私小説風なのですが、どこまでがノンフィクションでどこからがフィクションなのか、はたまたすべてが創作なのか煙に巻かれてしまいそうでしたが、そんなことはあまり気になりませんでした。
面白いなと思ったのは、依頼を聞く段階でそれ自体が人生相談のようになっていて、依頼人はもちろん受取人の性格や現在の状況を想像し、書きあがった手紙は依頼人すらも気付かなかった本当の気持ちまで引き出してしまうところです。
拝啓に、「ある意味で代筆屋は占い師的な力も求められるわけで、そうなると、文章力だけの仕事とは言えそうにない」と書かれているのですが、まさにその通りでした。
自分なりに、私ならどんな風に書くだろうと想像しながら読むのも楽しかったです。
辻さんにはとうてい敵いませんでしたけどね。

中でも印象深かったのは、第三章と第八章でした。
どちらもキーワードは『感謝』かな?
第五章の 『この際、はっきりとさせるために』も読後感がよかったです。
筆者の手腕に唸りました。
「手紙は心を写す」という言葉に、私も人の心を動かせる手紙が書けたらステキだろうなと素直に思いました。
欲を言えば、一部後日談が載っていないものがあって、それはそれでいいのでしょうが、ウィットに富んだオチが読んでみたい気もしました。

今まで読んだ辻さんの作品は
『サヨナライツカ』
『嫉妬の香り』
『オープンハウス』
『海峡の光』
『冷静と情熱のあいだ Blu』

なかなか引き出しを持ってるんだなと感じられた一冊でした。
短編だしサクサク読めるので、細切れに時間が空く時など持って行くのにお勧めかな。
物書きさんの参考にもなりそうです。
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by webwing | 2005-02-22 12:22 | 小説

きみに読む物語



         365通の手紙。
        白鳥の棲む湖。
        ──あの雨の朝の匂い。

        思い出が少しずつ、
        きみからこぼれていく。
        だから、  
        きみが思い出すまで、
        僕は読む──。




数日経った今でも感動のラストシーンをはっきりと思い出すことが出来ます。
深い深い真実の愛を──
そしてその愛が起こした奇跡を──



いつものようにネタバレです。ご注意下さい。


 空も湖も目に沁みるようなオレンジ色に染まった美しい風景の中、ゆっくりとボートを漕ぎ出す初老の男から物語は始まります。
岸に近づくボートを窓辺で見つめる初老の女性。
彼女は情熱的に生きた過去の思い出のすべてを失っていました。
療養生活を送るそんな彼女(ジーナ・ローランズ)の元に、物語を読み聞かせるためデュークと名乗るその男(ジェームズ・ガーナー)は足繁くやってくるのです。 
彼が語るそれは、1940年の夏、アメリカ南部の小さな町のきらめくような夏の恋物語・・・。


 休暇を過ごしに都会からやって来た17歳の令嬢・アリー(レイチェル・マクアダムス)に、地元の製材所で働く青年ノア(ライアン・ゴズリング)は運命的な出逢いを感じ急接近します。
強引なノアにやがてアリーも惹かれ、情熱的な恋に落ちます。
障害が多いほど燃え上がる恋…まさにその典型。
身分違いの恋に、娘の将来を案じた両親はアリーを都会へ連れ戻し進学させてしまいます。
ノアは365日毎日手紙を書きますが、その手紙はアリーの母によって隠されてしまい、一通の返信も受け取ることなくノアは第2次世界大戦の戦場へ。

空白の7年の後にノアとの恋に訣別し、別な男性と恋に落ち婚約してしまうアリー。
身勝手な価値観を押し付ける両親に反抗心を持ち続けていたアリーにとって、皮肉なことに彼はノアにはない財産や地位をもった、両親も諸手をあげて祝福する好青年でした。
そして結婚を目前に控えたある日、偶然ノアの新聞記事を見つけ思い迷うアリー。
そして「やり残したことがあるから」と婚約者の承諾を得て、あのキラキラしていた日々を過ごしたシーブルックに向かいます。

読み聞かせるデュークの語り口が、ジーンとくるんです。
穏やかで優しくて温かくて、深い愛情に溢れていて・・・

この若い2人の恋物語が、実はこの老いた2人のストーリーだと言うことに、間もなく気付かされるのですが、結果が予想できるのに、2人の恋の行方が気になりぐいぐい引き込まれてしまいます。

そして私が一番感動したラストシーン・・・
きっと観た人はみんな私と同じ気持ちじゃないかな。
言葉で表現しようとすると嘘っぽくなりそうなんです。
観ていない人の感動を奪ってしまいそうで申し訳ないし、是非自分の目で観て感動を味わって欲しいと思います。


見所は他にも沢山あります。
若い2人の感情が極まって、結ばれたいと強く願うシーンがあるんですが、自分で一枚ずつ衣類を脱いでいき生まれたままの姿になるところは、相手を想う純真な気持ちが伝わってきてドキドキしました。

そして再会した二人が押し殺していた感情を、嵐に後押しされるようにぶつけ合い、求め合うシーンとか。

実はアリーの母も若い頃にあのシーブルックで、アリーと同じような恋愛を経験してきていて、本当は心の中では許し、そしてアリー自身にこれからの人生の選択を委ねるところとか。 

読み聞かせることで、失った愛する妻を取り戻す僅かな瞬間があるんですが、その時のデュークが80歳の老人なのにとても可愛く見えるんです。
『マイダーリン』と呼び、愛しさでいっぱいの表情をして。
初めて恋人の名を呼ぶ10代の青年のように初々しくて。
それに応えるアリーも娘のようでした。
でも次の瞬間、夫の『ダーリン』という呼びかけに、『あなた誰?なぜ知らない人がダーリンと言うの?』とパニックになるアリー。
ジーナ・ローランズの名演技でした。
ほんの僅かな時間でまたアリーを失ってしまった時の、デュークの落胆振りがまた泣かせるんです。
目にいっぱい涙を溜めて、打ちひしがれ体を震わせて・・・

記憶を取り戻しても数分後にはもう夫を他人だと思ってしまう妻と、それでもなおも彼女を愛し続ける夫。
二人の間には、どんな障害をも乗り越えられるゆるぎない確かな愛が存在しました。
デュークが読み聞かせていた物語は、実はアリーが書いたものだったんです。
彼女は自分が完全に発症してしまう前に、二人の愛の記録をノートブックに残し、それを夫に読み聞かせてもらうことを望んでいたんです。
それによって奇跡が起こるかもしれないと・・・

共に歩んできた大切な記憶までをも失ってしまうアルツハイマーという病に最愛の伴侶を奪われても、なおも変わらぬ愛情で残りの人生を寄り添って生きていくことだけを望み、最愛の人をとりもどそうとする努力を惜しまない献身的な夫婦愛に人間の尊厳を感じました。

『わたしは、ありふれた男だ。でも、わたしには全身全霊をかたむけて愛する女性がいる。いつでも、それだけで十分だった。』というデュークが語る冒頭の言葉が、ラストで確かに胸に届きました。


また大切なことを教わった気がしました。
『ネバーランド』に続いてライフログになりそう・・・
お勧めです!

きみに読む物語
ニコラス・スパークス 雨沢 泰 / アーティストハウスパブリッシャーズ
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by webwing | 2005-02-14 23:59 | 2005年劇場版

ネバーランド

  ネバーランド
/ アミューズソフトエンタテインメント



 「ピーター・パン」の物語は悲しみを乗り越えるために生まれた───
   たくさんの透き通った涙を夢と希望に変えて。



悲しみからではなく、心の奥から自然に湧き出てくるような涙を流してきました。
遠い記憶やら忘れていた感情やらが、意識とは別の場所から俄かに沸き上がり心が震えた瞬間がありました。
きっと私の涙も透き通っていたんじゃないかな?
そんな涙を流せた自分が愛しくなり、この涙こそがこの映画そのものだと思いました。
私の中の大切な1本になりました。

主演のジョニー・デップは、大好きな俳優さんの一人です。
「シザーハンズ」や「ショコラ」もいずれここで紹介したいな。
あ、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のやんちゃなジョニデもいい!(笑)
シリアスな映画でもクスッと笑えちゃう不思議テイストを持っていて、そこが個性でもあり魅力だなと感じる彼には、バリ役は適役だと思いました。
だって彼自身が万年ピーター・パンみたいなんですもん。


前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に・・・ネタバレです。
きっともっと長くなると思いますが、よかったらお付き合い下さい。(苦笑)


1904年12月27日に「ピ-ター・パン」がロンドンの舞台で初めて上演されてからちょうど
100年目に作られた作品。
劇作家ジェームズ・マシュー・バリが、舞台劇「ピーターパン」を産み出すきっかけとなったデイヴィス一家との心の交流が繊細に静かに描かれています。

1903年のロンドン。
華やかに着飾った人々で埋め尽くされた劇場の片隅から、客席の反応を盗み見るジェームズ・バリ。
新作『リトル・メアリー』の舞台初日から物語は始まります。
客の反応は悪く、翌朝の新聞には酷評が・・・
気落ちしたジェームズは、愛犬ポーソスを連れ散歩に向かった公園で、若い未亡人のシルヴィアとその4人の幼い息子たちと出会います。
少年たちとすぐに打ち解けていくジェームズは、中でもどこか冷めた物言いで少年らしさの見られない三男のピーターを気に掛けるようになります。
やがてジェームズとシルヴィア親子との交友が深まっていく一方、強い疎外感にさいなまれるジェームズの妻メアリー。
純粋に子供たちとの交友を楽しんでいたジェームズにはそんな妻の気持ちが理解できず、夫婦の仲は冷えたものになっていきます。
そんな中、ジェームズはいつしかピーターに、自分の少年時代を垣間見るようになります。
父を亡くした悲しみのあまり、早く大人になろうと無理をしているピーター。
その姿は、兄を無くして悲嘆に暮れる母を慰めるため、少年の自分をネバーランドという永遠のファンタジーの世界へ追いやってしまった、ジェームズ自身の過去の姿と重なり合います。
そんな彼の思いは、新作劇に投影していきます。


ここからはもっと突っ込んだネタバレと感想です。
何の先入観も持たずに観たい方は、観賞後またお立ち寄りください。
あ、もう随分先入観与えちゃってますね。(滝汗)

観せ方がとても上手いんです。
無駄な説明なしにパッと空想の世界の映像が映し出されて・・・
最初に驚いたのは、『リトル・メアリー』の上演中に観客席にザーザー雨が降った時でした。
公園で愛犬をサーカスの熊に見立ててダンスを踊り、少年達の拍手喝采を浴びるシーンとか。
インディアンに扮するジェームズを映す前に、既に子供の笑っている部分を映すとか。
この意表をついた技法が繰り返されたお陰で、知らぬ間に少しずつ観る側の脳ミソも柔らかくなっていって、終盤では私自身も瞬時に空想の世界にトリップできたんだなと思いました。

子役たちもとてもいい演技をしているんです。
「私が今書いている芝居の男の子にきみの名前をもらってもいいかい?」と尋ねるジェームズに答えるピーターの表情とか。
ラストのピーターの涙とか。

そして長男ジョージもピーターに負けず劣らずとても光ってました。
母シルヴィアの病状の悪化にしたがい長男として徐々に大人になっていくジョージ。
そんな彼を見守るジェームズとの信頼関係が素敵でした。
「今、30秒で少年が大人になった」とジェームズが言うシーンがあるんですが、その時のジョージの横顔に感動しました。
まさにそんな瞬間があるんですね。
そして母の意思を尊重しようとおばあちゃんに反抗して自分の考えをはっきりと言い放つジョージ。
そこには確かに大人に成長した姿がありました。

『ピーターパン』の舞台の初日。
批評家が絶賛する作品にしか興味を示さない上流階級の人々に、本来の舞台の楽しみを思い起こしてもらおうと、孤児院の子供達を招待します。
気難しい顔で演技を眺めていた上流階級の大人達の顔が、子供達の無邪気な笑い声とともに、次第に柔らかな表情となり、最後は大人も子供も感動を共有できるんです。
子供たちの笑い声が、大人たちの心に童心を取り戻させてくれたんでしょうね。

そして具合が悪くなり劇を観れなかったシルヴィアのために、ジェームズは魔法のようなプレゼントを用意します。
私はこの場面が一番感動しました。
一瞬にして私の心もネバーランドに飛び立ったんです。

そしてこの映画のラスト。
そのピーターとジェームズがお互いの心を通い合わせるシーンはやはり泣かせます。
信じる力を失ってはいけないと説くジェームズ。

信じてさえいれば、大人になっても心は自由に飛びまわれることができる。
そんな素敵な魔法を教わった気がしました。

グリーンが美しい風景がスクリーンから迫ってきて観客をも包み込みます。
これはビデオでは体験出来ない出来ないんじゃないかな?
シルヴィアのために用意したネバーランドもぜひ劇場で観て欲しいな。

とにかくお勧めしたい映画です。
何かを感じられると思います。


【パンフレットこぼれ話】
ダスティン・ホフマンが演じる興行主で友人のチャールズって『シャーロック・ホームズ』の著者アーサー・コナン・ドイルだったんですって。

それと、ピーターを演じたフレディ・ハイモア君はなんとジョニデと同じ6月9日の誕生日なの。
だから気が合うのか、ジョニデお気に入りの俳優さんとなり、次回作でもジョニー・デップと共演するそうです。

そしてここでの兄弟は4人なんですが、実際は5人兄弟だったそうで、本当のディヴィズ家の5男坊の娘、ローラ・ドゥグッドが出演しているんですって。『ピーターパン』初演後のパーティのシーンで、ピーターに「あなたが、ピーター・パンね」と話し掛ける女性だそうです。



最後まで読んでくださってありがとうございます。
上手く伝わったでしょうか?
本当はジェームズとシルヴィアのプラトニックだからこそもっと深いところで結ばれている関係とか、妻メアリーの心情とかもっと書きたかったんですけど、これ以上長くなるのもどうかと思って・・・
もう十分長いんですけどね。(撃沈)
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by webwing | 2005-02-05 02:13 | 2005年劇場版